メイプル・シロップ。

おそらくは『大きな森』より『大草原』のほうが一般的には知れてるとおもいますが、わたしはこの『大きな森』のお話がだいすきです。
特に、食べものや遊びや洋服(布地)の描写が実に生き生きとしていて、目の前に広がるかのように伝わってくるので、そういう部分は何度も読み返して、諳んじてしまったほどです。

自給自足の時代ですから、鹿や熊や豚を狩猟してきたり、または飼育していたりして、それを食べるのですが、とても美味しそうな文章なのです。
鹿も熊も食べたことはありませんし、実際に出されてもおそらく食べられない(苦手)とおもうのですが、この本を読む限りは、たいへんに美味しそう。

なかでも、豚を1頭、屠殺して解体するまでの場面には、現代では有り得ないことがたくさん描かれます。
まず、豚を殺すのは男衆の役目です。
主人公であり書き手でもあるローラは、殺されるまでの豚の悲鳴を聞きたくなくて、ベッドにもぐりこみ、耳をぎゅっと塞いでいます。
そして頃合を見計らって外に出ると、豚は女衆が沸かした熱湯でゆでられ、毛をそがれ始めているわけです。
ここからの作業をローラは嬉々として見つめます。
このへんの切り替えの早さというか逞しさは、この時代の子ならでは、という感じです。

わたしの印象に強く残っているのは、ローラも、姉のメアリーも楽しみに待っている“豚の尻尾の丸焼き”と“膀胱の風船”です。
“豚の尻尾の丸焼き”は文字どおり、切り落とした豚の尻尾に金属の棒を刺して火で焼くもの。
ふたりはこれが大好物で、いい具合に焼けるのを今か今かと待っているのですが、ここのくだりを読んでいると、いいにおいがしてくる感じなのです。

そして“膀胱の風船”。
これは驚いて印象に残っているシーンです。
大人たちは、解体した豚の膀胱をきれいに洗ってから息で膨らませ、先端を結んでローラたちにくれます。
ふたりはそれを使ってバレーボール遊びをするのです。
つまり、紙風船の感覚ですね。
これには一種のカルチャーショックを受けました。
オモチャ、がほとんど無い時代のお子たちは、こういうもので遊んだんだ! という。
なので、強烈に記憶に刻まれてしまったのでした。


他にもバターやチーズ作りの描写もあって、それもなかなかに楽しそうなのですが、わたしがもっとも羨ましかったのが、メイプル・シロップを使ったキャンディ作り、でした。
楓の木から染み出る樹液を集めてシロップ状にしたものを、まっさらな雪の上に垂らして固めて作る、ローラをはじめとして、子どもたちのだいすきな冬の行事。
そりゃ、そうでしょう。
トロトロとしたシロップを、すきなカタチのキャンディにして、それを食べられるんですから!
もちろん、わたしもやってみたくて仕方なかったです。
だってわたし、メイプル・シロップがだいすきなのですもの! ハチミツよりも断然! なのです。
だからもう、ここのシーンを読むとたまりませんのです(今、書いててもヨダレが……)。



で。
なぜ突然にこの本の話が出てきたか、と申しますと、昨日の朝、わたしはホットケーキを食べようとしていたのですが、大ボケなことにメイプル・シロップを買うのを忘れていまして
「がーん! メイプル・シロップが無いとホットケーキじゃないじゃんかよー!」
という、大きな独り言(ひとり暮らしが長いとどうしてもそうなるのですよ)から、脳内で記憶の連鎖反応が起こり、このエントリへと繋がったのでした。
脈絡が、あるような、無いような。


お子たちに、時間のあるときに読んで貰いたい一冊です。



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Comment








>acoyo姐様
いえいえ、とんでもない!
お忙しいのにかえって恐縮です。

このシリーズ作品のファンが多いのは嬉しいです。
そして姐さまがお好きなシーンは、まさに表紙の絵のところですよね!
(トウモロコシの芯が人形代わり、というのも凄く印象的でした)
母さん手作りの人形の描写も細かくて、布地の手触りも伝わってくるようだったのを覚えています。

子どもにモノを大切にする、ことを覚えてもらうのは、ほんとに難しいとおもいますね。
from. 夏葉 | 2008/02/17 13:19 |
どうも。忘れられた頃にカキコにくる私です。
そいでね、私もこれ、全冊持ってます、厨房時代から愛読してます。
つか、嫁に行くときも担いで行くつもりでしたが、母もファンで「これは置いていけ、誰の金で買ったと思う」と命令したもので、泣く泣く置いていきました。実家帰った時とか、たまに読み返します。

私は、この本ではクリスマスかなんかに、お人形(おそらく手作りの貧相な人形)もらって、ローラが興奮して目をまん丸にするとこが好きです。それまでトウモロコシに布きれまいて「人形のつもり」で抱いてたわけですから、そりゃあもう、すごい感動だったろうと。
私が誰か子供にものを贈るなら、こんな風に顔中目にしてじーっと見入ってくれるようなものを贈りたいなあと。
つか、子供がそういう風に感動できるようにするには、あんまり与え過ぎちゃいけないんだ、それってかわいそうなことなんだと思います。
from. acoyo | 2008/02/14 20:11 |
>ウィッシュ・ボーン様
こんにちは!
忘れずにいてくださって嬉しいです。
ウィッシュ・ボーン様も同じところがお好きなのですね!
印象的ですもんね。
食べ物以外で印象が強いのが、親戚一同(だったはず)が集まってのダンスパーティです。
女性陣が目の色を変えてするオシャレの描写が、すきでした。
(中居さんネタが出なくてすみません。でも今後はもっと減る方向に行きそうです)

>ヒカル様
ヒッコリィの葉、ですよね!!

from. 夏葉 | 2008/02/13 21:14 |
燻製の作り方もうまそうですよね☆
from. ヒカル | 2008/02/12 16:54 |
夏葉さん、こんにちは。
コメントは、お久しぶりで〜す。
あのシリーズは、いいですね。
私も、豚の尻尾も、膀胱の風船も、よく覚えています。
でも本物のメイプルシロップ、意外と高くて、なかなか買えません。(泣き)
美味しそうな表現と言えば、「農場の少年」の食べ物の数々、想像しただけで、
わくわくしました。(笑)
丁寧なバター作りや、真夏の冷たいレモネードも。
一年働いた両親が、休暇を取るシーンも素敵でした。
from. ウィッシュ・ボーン | 2008/02/12 11:35 |
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