くろすけ恋しや。
『おそろし』の続編。

でも、今作のほうは重くない。
『おそろし』が、主人公・おちかの閉じてしまった心とその傷を開かせ癒すための話で、全体的に陰鬱な雰囲気が漂っていたのに対して、こちらは“ほのぼの”というか“優しさ”がメインテーマにされているような空気だった。
作中に子どもがたくさん出てくるようになった所為かもしらんですね。
あと、『おそろし』が、宮部さんお得意の、短編集なのかとおもってたら実は長編話だった、というスタイルに対して、こちらは短編集ですよ、と言ってもいい一冊。
途中で登場したキャラがのちのちまた出てくる、というのはあるけれど、『おそろし』の終局にあったような、ラス・ボス退治、という展開はない。

だからって本作が『おそろし』に劣るか、って言うわけはぜんぜん無い。
相変わらず、面白い。
つーかもう、表題作になった『暗獣』が素晴らしすぎる!!
いやぁ、泣いた、泣いた、泣きました。

謎のいきもの“くろすけ”と、加登夫妻の交流がなんてまあ、優しいのであろうか。
黒いカタマリにしか見えないくろすけを、忌むことなく
「あれはコドモですよ」
と言い、いっしょに手鞠歌を歌い、月見をして暮らす日常の、なんと穏やかで暖かいことか。
なのにくろすけのためには、いっしょに生活しないほうがいいのだ、ということに気づき、屋移りすることを決める夫妻。
このとき、くろすけに諭す、加登隠居の言葉が、これまた泣けて泣けて仕方ない。
くそー、なんでこんなに泣けるんだー。
(なんとなく『孤宿の人』の、加賀殿とほうの関係性に似ていなくもない感じ。だからやたら泣けるのかも)

むろん、他の章が読み劣りする、なんてことはない。
単にこれは嗜好の問題で、わたしがこのテの話に滅法弱い、というだけのこと。

とは言うものの、このシリーズは当初のものとはかなり空気感が変わってきているのは確か。
まあそりゃあ当然で、おちかの心がかなり前向きになってきたのだから、そうでないとならないわけで、でも完全にふっきっているんではないから、今回登場したお勝さんや、行然坊、そして青野利一郎が、これからのおちかの立ち直りにおおいに関係してくるんだろうな、という楽しみも増えた。

個人的には越後屋の跡取り清太郎よりも、青野とおちかが接近したほうが嬉しいのであった。



読・読 comments(1) trackbacks(1)
Comment








こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
from. 藍色 | 2011/11/18 16:59 |
Trackback
この記事のトラックバックURL: http://hikigiwa.setogiwa-anex.coolblog.jp/trackback/5499
さあ、おはなしを続けましょう。三島屋の行儀見習い、おちかのもとにやってくるお客さまは、みんな胸の内に「不思議」をしまっているのです。ほっこり温かく、ちょっと奇妙で、ぞおっと怖い、百物語のはじまり...
| 粋な提案 | 2011/11/18 16:58 |
<< NEW | TOP | OLD>>