ぽりぽり。
年をとると味覚も変わってくるわけで、四十路を過ぎたあたりから “漬け物” がやたらと美味しく感じるようになった。
特にわたしは「胡瓜の浅漬け(塩漬け)」に参ってしまって、夏は殊更旨いので、この時期はもう、毎晩ご飯のお供にぽりぽりやっている(わたしがすきなのでオカンが食卓に律儀に毎日出してくれるのだ)。

で。

漬け物をぽりぽりやっていると、かならず連想する一文があったりする。
それはおセイさんの『新・私本源氏 春のめざめは紫の巻』のなかの「六条ろくでなしの巻」で、六条御息所が源氏と逢ったあと、くつろいで食事しているときの描写
(略)お化粧を落し、地肌になられて
「ああ、せいせいしたわ! ぶぶ漬けのご飯に塩漬け菜を早く」
源氏の君がいらっしゃると、モノも召し上がれない。
−(中略)−
「あら、このお菜が漬かり具合がよく、美味しいこと。わたくしは漬物が大好物。菜の花漬けはもうなかった? このあいだの、なんとかっていった人のおくりもの、『大安(だいやす)』の詰め合わせ漬物」
「もうみなお上がりになりました」
「あらそう。早く瓜の漬物が食べられるようになればいいのに」
健啖にぶぶ漬けを召し上がり、白湯をすすられて満足される。
のところをおもいだして、御息所に応じるがごとく
「わたくしも漬け物が大好物。早く瓜の塩漬けが食べたいですよねー」
などと、気分よくぽりぽりとやっている(心の中で)。


おもえばわたしには、本の食べ物の描写の部分を変に暗記しているところがある。
以前「メイプル・シロップ」についても書いたが、もうひとつ「桃」にもお気に入りの一文があるのだ。
それは松谷さんの『ふたりのイーダ』にある、主人公の直樹が幼い妹のゆう子とふたりで、偶然発見した「歩く椅子」の居る家の庭で昼食をとる
うらの水うけにひやしておいたももを取ってきて、直樹はおにぎりをひろげた。口に入れると、のりとごはんと、ごま塩のこうばしさがひろがって、ほっぺたがおちそうだった。ゆう子はよっぽどおなかがすいていたのか、みるみる二つたいらげた。つめたくひえたももにもかぶりつき、麦茶も飲むと直樹はバスケットにすっかりしまった。
このシーン。
どっちかってーとおにぎりのほうが美味しそうに書かれているのに、わたしはなぜかずっと覚えてるほどに桃のほうに心惹かれた。
たぶん、水受けで冷やされた桃、というのがわたしの想像力をかきたてたのだとおもう(いちばん近かったイメージが『となりのトトロ』で、カンタのお婆ちゃんちの畑で採れたトマトや胡瓜が川で冷やしてあった画(え))。
冷蔵庫で冷やしたのなんかより、ずっとずっと冷えてて甘くて美味しいに違いない! と勝手に思い込んで、こうして覚えているのだった。

我ながら変わった嗜好だなぁ。


でも今いちばんはまっている漬け物は京都の名店『西利』さんの「味すぐき」なのだ。
クリックするとオンラインショップのページへとびます。



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